Story




さぁ、扉を選んで。
空っぽの器に愛する記憶をつめこんで、
虚ろな存在からもう一度、
お兄さんになるために。
仕事帰りにスーパーへ寄って二人分の食料を買い込み、家に帰る。
二人分の料理を作り、テーブルにセッティングする。
しかし、向かい合う席には誰もいない。
黙々と一人で食事をする。
安曇野志温は、わかっていた。
自身が繰り返している行為が異常だということを。
しかし、どうしてもやめられなかったのだ。
誰かが、お腹が空いたと
泣いてしまいそうで。
仕事もプライベートも順調なのに、何か大切なことが抜け落ちているような飢餓感に苛まれていた志温は、ある日の仕事からの帰り道で、人ではない――怪しげな男に声を掛けられる。
ずっと、半身を失ったような
感傷に悩まされてきたんだろう?
志温の状態を言い当てた男は、
“記憶を再構築する” 薬を手渡す。
自身が抱える飢餓感を解消したい一心で薬をあおった志温が次に目覚めると、そこは白い海が広がる白亜の世界だった。
ようこそ、記憶の箱庭へ
記憶がリセットされ、困惑する志温の前に現れたのは、案内人を名乗る少女・すずと3色の扉。
さぁ、扉を選んで。
空っぽの器に愛する記憶をつめこんで、
虚ろな存在からもう一度、
お兄さんになるために
こうして安曇野志温の記憶探しの旅が始まった。